ピッチを通じて投資家が一番見たい情報TOP4

アクセラレーターの運営側だった頃は数え切れないほどのスタートアップのピッチを聞くことができた。素晴らしいピッチもあればもちろんダメなピッチもあった。

でも具体的に何がピッチをダメにしているのだろうか?

実はコミュニケーション能力や演説力はそこまで関係ない。コミュニケーションが上手くない技術者系CEOは多い。投資家側もそれには慣れている。

ピッチをダメにしているのはアイデアの質でもない。

ダメなピッチは聞き手が何の情報を知りたいかを考慮していないピッチだ。

では投資家はピッチを通じて何を知りたいのか?
ランキング形式でTOP4を見ていきましょう。

投資家に一番響くピッチの内容ランキング

1.トラクション

トラクションとは市場需要の定量的な証拠になる指標。ようするに実績だ。プロダクトの売上、ユーザー数、UU、事前サインアップ数などが主にトラクションとして使われている。

トラクションが一番大事な理由なのは、要するに「論より証拠」。投資家だって正直どのスタートアップが成功するのは分からない。不確定要素が多すぎる。だがトラクションがあれば、「需要のあるプロダクト作った結果」になるので多くの不確定要素を潰せる。Snapchatも、アイデアだけを聞くとバカバカしいが150Mユーザーがいると聞くと自分の考えを改めざるを得ない。やはり実績に勝る証拠はない。

Hatchの場合、まだリリースしていないのでトラクションがない。だからこそ次のラウンドまでに可能な限りトラクション(Hatchの場合ユーザー数及び課金率)を増やすのが弊社の最優先事項だ。

2. チーム

例えば投資家が自分のプロダクトやビジネスチャンスを理解はしてくれたとしよう。その際、大事になってくるのが「なぜこのチームじゃなければいけないのか」だ。なぜなら良いアイデアでも、プロダクト開発経験のあるメンバーがいなければ何も始まらないし、いい感じにトラクションが伸び始めてきても競合に真似され始めた時に、競合に勝てるビジネス能力があるチームなのかも見ている。そして何より当初のアイデアを作って、上手くいかなくても優秀なチームなら違う事業を作り、立て直す可能性だってあるから投資リスクがその分軽減する。

だからこそ資家を安心させる為にチームの情報を伝えるのは大事。
一番手っ取り早いのは履歴書のようにチームの一人一人の経歴をスライド提示するのことだ。これを案外やらないチームが多いため、「どこの馬の骨だよ」感が投資家の脳を過ぎってしまう。

Hatchの場合はこういう感じだ:

名前、役職、役割だけでは伝わらない。経歴のサマリーを載せると印象が残る。この際、関わってきた会社やブランドも信頼に繋がる。

我々の場合、チームスライドのすぐ後に前職・過去のクライアントを紹介するスライドも入れた:

聞き手の信用を得るのはそれだけ大事。

そしてスライドには載っていなくても必ず聞かれるのがチーム間の繋がりだ。
驚くほど多くのスタートアップの失敗はチームの崩壊が理由にある。
あったばかりの赤の他人だと少し懸念される。だからと言って、友達とチームというのも心配される。一番いいのはチームで一緒に何かを作ったことのある経歴。でも正直結構難しい条件だと思う。私も一緒に起業したいと思う、相思相愛のメンバーを見つけるのに3年かかった。でも急かさずに待つ甲斐があったと感じている。

3.プロダクト

ここでやっとプロダクト。なんでプロダクトが3番手なのかと思うかもしれない。面白くて論理的なビジネスアイデアが全てだと。それは分かる。だが投資家は「これはすごい!絶対上手く行く!」と思ったプロダクトが何度も失敗するのを見てきた。だからこそ証拠のようなものになるトラクションやチームの方が重要になる。

プロダクトスライドは基本的に「誰の何をどう解決するのか」を突いていれば、表現は自由。そして完成したもの or 完成系に近いものブランディングを配慮したスライドだと聞き手の信用を掴める。

Hatchのプロダクトスライド:

4.市場

投資家にとって、スタートアップに目指してもらいたい目標の選択肢は最終的に二つしかない:IPOかM&Aだ。いくら良いプロダクトで、市場を独占することに成功しても、年間売上が数千万円程度の市場規模だったら彼らに投資する意味がない。

その為、現在のターゲット市場の大きさや潜在規模を上手く伝える必要がある。

市場スライドも色々ある。Hatchのはこんな感じ:

結論

プロダクトを作る時、一番大事なのがユーザーのニーズに合わせたプロダクトを作ること。ピッチだって同じだ。聞き手が何を大事にしているのかを知った上で作り上げることが大事。

次の記事はHatchの実際のピッチデッキの公開と解説をします。

起業したいなら今すぐプログラミングとデザインを始めるべき

私は数年前に有名なハッカソン「スタートアップ・ウィークエンド」に参加し、非常に面白い現象を見た。

ハッカソンの目的は限られた時間内その場で出会ったメンバーとでどこまでプロダクトを作れるかを試し、制限時間の最後にそのプロダクトを審査員にピッチするイベント。そしてスタートアップ・ウィークエンド特有のルールは参加者が必ず自分をHipster (デザイナー) Hacker(エンジニア)、 Hustler(ビジネスパーソン)のどれかとして参加しなければならない。

チームを作る際、一番良いチーム構成はもちろんHipster  Hacker Hustlerの全員を揃えることだ。だが一番興味深かったのは一つの属性に偏ったチーム達の結果だった。

Hackerのみで構成されたチームは動くプロダクトができていた。キレイではないしUXもよくないが、見た目がどうであろうと実際に動くプロダクトができていた。何かを生み出していたのだ。

Hipsterのみのチームは、プロトタイピングツールで実際動いているように見えるキレイなモックアップができていた。表面上だけであっても、完成形に限りなく近いものを生み出していた。

Hustlerのみのチームはプロダクトもモックアップもなく、ビジネスプランをパワポに打ち出してあった。つまり何も具現化されず、アイデアはアイデアのままだった。事実上なにも生み出していなかった。

上記の各チームが出した結果は実際のスタートアップ業界の良い例になっていると思う。

スキルがないのに起業をしたい人が多すぎる

アイデアはプロダクトになって初めて現実になる。アイデアをプロダクトにする能力が自分に備わってないなら、かなり人頼りの起業になってしまう。なのにスタートアップ業界には起業や”イノベーション”の話ばかりはするけど自分ではプロダクトを作ろうとしない「なんちゃって起業家」が多すぎる。特にHustlerの部類に「なんちゃって」が圧倒的に多い。そしてその人たちがよく使う言い訳が「資金がないから」や「賛同してくれるチーム(Hipster/Hacker)がまだ見つからないから」。だが実際にはそんな人任せな起業は一生始まらないし、始まったとしてもその人が無能なメンバーなままな状態は変わらない。

そんな人には良い人は集まらない。特にHackerの人たちはIT系にチンプンカンプンなボスを避けるため、Wantedlyみたいな最近のスタートアップ就職サイトには「社長がプログラミングできる」というフィルターがある位だ。

何かを作りたいなら自分自身で創造する能力を備えるべき。当たり前なことだが、「起業したい」と言う大多数の人は実践していない。だが自分も大多数の人のままでは特別な物は作れない。だからこそ絶対に怠けてはいけない。

人の力に頼らずに自分がプロダクトを作るためなら必死で勉強と努力を行うべき。そうすれば資金も人材もいらずに自分が願っていたものができる。しかも逆に初期のプロダクトさえ作ってしまえば、面白いことに資金もメンバーも自然に集まりやすくなる。

では自分でプロダクトを作るのはどう始めればいいのか?数年前、ベンチャーキャピタルで働いていてビジネスしか取り柄がなかった私は、こうやって始めた:

専門学校やクラスは全く通ってない。独学だけ。現代は情報社会。プログラミングの情報やデザインの情報も一生読んでも読みきれないほどの量が無料で公開されている。分からないは検索しながら学べばいい。全てが独学できる時代なのだ。

Hatchのアイデアからプロダクトの軌跡

私の場合、Hatchというマッチングアプリを世の中に出したいと思った。
自分のみでも作ろうと思えば作れるが、競合を負かすスピードで開発やマーケティングを行いたいなら資金調達が必要だと分かっていた。

でもアイデアだけで投資家にピッチしても、笑われて返されるだけ。過去ベンチャーキャピタルで働いてたからこそ分かる、資金調達が有利に効くプロダクトの状態の順位はこうだ:

プロダクトができていて利益が出ている>>プロダクトができていてユーザーがいる>>>>プロダクトのプロトタイプがある>デザインが完成している>>>[超えられない壁]>>>> 良くできたピッチデッキ>アイデア

上記のプロダクト状態の順位によって資金調達が左右されるのはシンプルな理由がある:投資家はこのチームが実際プロダクトをそもそも作れるのかが知りたいからだ。

時間短縮の為、私は投資家を周る前にプロトタイプまでは完成させておくことに決めた。

そこからは数ヶ月間、週3フリーランスの仕事をしながらそれ以外の日はカフェへ行きHatchの作業に取り掛かった。

デザイン

まずはアプリのデザインの完成形予想して、色んなターゲットユーザーから意見を貰いながらデザインしていった。

時間をかけて進化させていった。

デザインが完了した段階でプロトタイプ作りに集中。

プロトタイプ

Hatchは初期の頃はSwiftではなく、iOSとAndroidを同時に出せるようReact Nativeで書こうと決めていた。私は実際React Nativeを触ったことがなかったからプロトタイプ作りはこう始まった:

数週間はかかってしまったが、Hatchのメイン画面のプロトタイプができた。

(雑談だが、資金調達後、結局React NativeはヤメてSwiftにで開発することにしたので私の書いたコードが無駄になった。でもプロトタイプのメインの役目は投資家に見せる為だったので、特に問題ないし、私の勉強にもなった。)

React Nativeで作ったプロトタイプの動画を撮り、次はサイト作りに取り組んだ。

ウェブサイト

実際のプロダクトはアプリであっても、ウェブサイトを事前に作っておくことはプロトタイピングの一貫である。他の人に自分のプロダクトの話をする時にリンクを送れるのは強力だ。プロダクトがまだできていない時、サイトはプロダクト代わりになる。

Hatchは殻から出ているヒヨコ(🐣)をモチーフにしているため、卵の殻っぽいデザインをサイトに取り入れた。でもそんなデザインはやってことはないので、もちろんこう調べた:

あと残るはピッチデッキだった。

ピッチデッキ

ピッチデッキもある程度はデザインして、プロトタイプの動画をタイトルページに埋め込んだ。
(ピッチデッキの構成についてはまたの機会に書きます。)

そしてピッチデッキができた段階で色んな投資家にアプローチをかけ始めた。

結論

プログラミングとデザインを独学していたおかげでアプリのデザイン、プロトタイプ、ウェブサイト、ピッチデッキに掛かった費用は0円。人に渡した株も0。安上がりに資金調達ステージまで持って行けた。

そして資金調達した今でも、UI/UXデザイナーやディレクターは自分ができるからこそ人を雇う必要がない分、資金をマーケティングなどもっと他のものに回せる。

それに加え、React NativeやギザギザのCSSなど前に知らなかったことが身についた。これもいつかはまた役に立つ。

現代はIT系の起業が多い。IT系ならプログラミングとデザインを学ぶことは必須だと思うし、自分のアイデアを実現できるのは強力なスキル。
世の中のほとんどの人がHustlerだからこそ、HipsterとHackerのスキルを備えるべき。全部揃ったら怖いものなんて正直なくなる。

私も正直Hackerの部分がイマイチだが、現在進行形で学んでいる。でも結果的に最強のHackerになろうとはしてない。自分の作りたい物の原型だけでも作れればそれで十分。

数年前までビジネスとDJしか取り柄がない私にでもできるなら、正直誰にでもできると思う。「自分には遅すぎる」「時間がない」など決して自分に言い聞かせてはならない。

起業の道は荒波に似ている。険しい波の中、自分以外メンバーが全員船から振り落とされることだってある。そんな時に自分だけででも舵を取れるくらい器用な船長であれば、その船は航海を続けられる。逆に自分で舵の取り方を知らない船長だと、その船は沈む。舵の取り方を知らないまま船長になってはダメだ。

プロダクトを作りたいなら怠けず、一度真剣にHipsterとHackerのスキルを身につけて欲しい。

マッチングアプリ「Hatch」を作り始めました。

女性から会話を始める、新感覚マッチングアプリ「Hatch」(ハッチ)を作り始めました 。

資金調達も完了し、これから全速力で動いていきます。
共同創業者はTinder Japanの元代表で長き友人でもある Omar Yukihiro Mです。
私がプロダクトを担当し、オマールはマーケティングを担当します。

「女性側からしか会話を始められない」という制限はシンプルそうで、実は色んな可能性を秘めています。
その制限があるからこそ色々と付け加えれる機能を今後紹介できればと思います。

このHatchを通じて色んな人の人生をより一層楽しくすることが目標です。

私は元ベンチャーキャピタリスト側であり、色んなスタートアップのUI/UXデザイナー・デイレクター・エンジニアをやってきたて、今回2度目の起業になるので、色々スタートアップの現実について人に伝えたいことが溜まってます。Hatchを機に、起業や資金調達の裏側、プロダクト作りのプロセスなどを全部オープンにシェアしていきます。

色んな人にHatchをケーススタディーとして参考にしてもらい、日本で起業や新規サービス作りを試みる人を増やすのが私のもう一つの目標です。

最後にHatchのベータ版を優先に試したい方はぜひサイトでメールアドレスを登録してください 🐣 🐣🐣

https://www.canwehatch.com/